ReduxとRecoilの違いを比較!どちらを使うべきか?

Reactアプリケーションの状態管理において、ReduxとRecoilは人気のある選択肢です。この記事では、両方のライブラリを詳しく比較し、プロジェクトに最適な選択をするための指針を提供します。

目次

  1. ReduxとRecoilの概要
  2. アーキテクチャの違い
  3. 学習曲線と開発体験
  4. パフォーマンス比較
  5. 使用シナリオと適合性
  6. コード例で見る比較
  7. まとめ:どちらを選ぶべきか

ReduxとRecoilの概要

Redux

Reduxは2015年にリリースされた状態管理ライブラリで、Flux アーキテクチャに基づいています。予測可能な状態コンテナとして、単一のストアに全アプリケーション状態を保持する設計が特徴です。

主な特徴:

  • 単一の真実のソース(Single Source of Truth)
  • 状態は読み取り専用(イミュータブル)
  • 純粋関数であるリデューサーによる状態変更
  • アクション → リデューサー → ストア というデータフロー

Recoil

Recoilは2020年にFacebookによって発表された、React向けの比較的新しい状態管理ライブラリです。Reactのローカル状態と同じような使い勝手を目指しながら、グローバル状態管理の利点も提供します。

主な特徴:

  • アトムとセレクタという概念を使用
  • 分散型状態管理アプローチ
  • Reactのフックとの強い統合
  • 非同期データフローのサポート

アーキテクチャの違い

Reduxのアーキテクチャ

Reduxは中央集権的なアプローチを取ります。すべての状態は単一のストアに格納され、どのコンポーネントからも接続できます。状態を変更するには、アクションをディスパッチし、リデューサーを通じて処理する必要があります。

アプリケーション → アクションをディスパッチ → リデューサーが状態を更新 → ストアが新しい状態を保持 → 変更を購読しているコンポーネントに通知

このパターンはデータフローを予測可能にする一方で、ボイラープレートコードが多くなる傾向があります。

Recoilのアーキテクチャ

Recoilは分散型のアプローチを採用しています。アトムと呼ばれる小さな状態単位を定義し、それらは個別に更新できます。セレクタはアトムから派生状態を計算します。

アトム(基本状態単位) → セレクタ(派生状態) → コンポーネント

このアプローチにより、状態更新の粒度が細かくなり、不要な再レンダリングを減らすことができます。

学習曲線と開発体験

Reduxの学習曲線

Reduxには独自の概念(アクション、リデューサー、ミドルウェアなど)があり、初心者には学習の壁が高く感じられることがあります。ボイラープレートコードも多くなりがちです。ただし、Redux Toolkitの登場により、ボイラープレートが大幅に削減されました。

開発体験:

  • ボイラープレートが多い(Redux Toolkitで改善)
  • 明示的なデータフロー
  • デバッグが容易
  • エコシステムが成熟している

Recoilの学習曲線

RecoilはReactの既存概念(特にフック)に基づいているため、React開発者にとって馴染みやすい設計になっています。

開発体験:

  • 最小限のボイラープレート
  • Reactのメンタルモデルに沿った設計
  • フックベースのAPI
  • 非同期処理が直感的

パフォーマンス比較

Reduxのパフォーマンス

Reduxは単一ストアアプローチのため、小さな状態変更でも接続されたすべてのコンポーネントが再評価される可能性があります。適切なメモ化とセレクタ使用が重要です。

パフォーマンス特性:

  • connectやセレクタによる最適化が必要
  • 大規模アプリケーションでは注意深い実装が必要
  • Redux Toolkitによるパフォーマンス向上

Recoilのパフォーマンス

Recoilは細粒度の購読モデルを採用しており、特定のアトムやセレクタが変更された場合、それに依存するコンポーネントのみが再レンダリングされます。

パフォーマンス特性:

  • 細粒度の状態管理
  • 自動的な依存関係トラッキング
  • 不要な再レンダリングの削減
  • 大きな状態ツリーでも効率的

使用シナリオと適合性

Reduxが適している場合

  • 大規模でエンタープライズレベルのアプリケーション
  • 複雑なデータフローを持つアプリケーション
  • チーム開発で厳格なパターンが必要な場合
  • デバッグやテストが重要な場合
  • 既存のReduxエコシステムを活用したい場合

Recoilが適している場合

  • React専用のプロジェクト
  • 迅速な開発が必要な場合
  • 非同期データフローが多いアプリケーション
  • 細かい粒度の状態更新が必要な場合
  • Reactのパラダイムに近い書き方を好む場合

コード例で見る比較

Reduxの実装例

// アクション定義
const INCREMENT = 'INCREMENT';
const DECREMENT = 'DECREMENT';

// アクションクリエイター
const increment = () => ({ type: INCREMENT });
const decrement = () => ({ type: DECREMENT });

// リデューサー
const counterReducer = (state = { count: 0 }, action) => {
  switch (action.type) {
    case INCREMENT:
      return { ...state, count: state.count + 1 };
    case DECREMENT:
      return { ...state, count: state.count - 1 };
    default:
      return state;
  }
};

// Redux Toolkitを使った場合
import { createSlice, configureStore } from '@reduxjs/toolkit';

const counterSlice = createSlice({
  name: 'counter',
  initialState: { count: 0 },
  reducers: {
    increment: (state) => {
      state.count += 1;
    },
    decrement: (state) => {
      state.count -= 1;
    },
  },
});

export const { increment, decrement } = counterSlice.actions;

const store = configureStore({
  reducer: {
    counter: counterSlice.reducer,
  },
});

// コンポーネントでの使用
import React from 'react';
import { useSelector, useDispatch } from 'react-redux';
import { increment, decrement } from './counterSlice';

function Counter() {
  const count = useSelector((state) => state.counter.count);
  const dispatch = useDispatch();

  return (
    <div>
      <button onClick={() => dispatch(decrement())}>-</button>
      <span>{count}</span>
      <button onClick={() => dispatch(increment())}>+</button>
    </div>
  );
}

Recoilの実装例

import React from 'react';
import { atom, useRecoilState } from 'recoil';

// アトム定義
const countState = atom({
  key: 'countState',
  default: 0,
});

// コンポーネント
function Counter() {
  const [count, setCount] = useRecoilState(countState);

  return (
    <div>
      <button onClick={() => setCount(count - 1)}>-</button>
      <span>{count}</span>
      <button onClick={() => setCount(count + 1)}>+</button>
    </div>
  );
}

// 非同期処理の例
import { selector, useRecoilValue } from 'recoil';

const userDataState = selector({
  key: 'userData',
  get: async () => {
    const response = await fetch('https://api.example.com/user');
    return response.json();
  },
});

function UserProfile() {
  const userData = useRecoilValue(userDataState);
  
  return <div>{userData.name}</div>;
}

まとめ:どちらを選ぶべきか

Reduxを選ぶべき理由

  • アプリケーションが大規模または複雑
  • チーム規模が大きい
  • 厳格なアーキテクチャが必要
  • 成熟したエコシステムを活用したい
  • 学習コストを払う余裕がある

Recoilを選ぶべき理由

  • Reactネイティブの開発体験を重視
  • 迅速な開発と最小限のボイラープレート
  • 非同期データフローが多い
  • 細粒度のパフォーマンス最適化が必要
  • 最新のReactパラダイム(フック)に親和性が高い

最終的な選択は、プロジェクトの要件、チームの経験、長期的なメンテナンス計画によって決まります。既存のReduxプロジェクトであれば、そのまま継続する価値はあります。新規プロジェクトでは、Recoilの簡潔さとReactとの統合の良さが魅力的かもしれません。

どちらも優れたライブラリであり、適切に使用すれば効果的な状態管理を実現できます。小さなプロジェクトから始めて、自分のワークフローに合った方を選ぶのが最善のアプローチでしょう。

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